虫歯は歯自体に穴を開け、歯を壊していくのに対して、歯周病は歯を支えている歯肉や骨を破壊していきます。家で例えると建物の基礎が壊れてしまうようなものなので、歯がしっかりしていても、歯を支えている骨がなくなってしまうと、歯がグラグラして抜けてしまいます。
どのくらいの人が歯周病になっているの?
歯周病の進行程度を調べる検査では、歯と歯肉の境目にある歯周ポケットの深さを調べます。正常な歯周ポケットの深さは3㎜ほどですが歯周病が進行していると歯の周りの歯肉や骨が壊され、歯周ポケットが深くなります。一般的に4㎜以上のポケットは歯周病と診断されており、35歳以上では40%以上、50歳以上では50%以上もの人が4mm以上の歯周ポケットを保有しているというデータがあります。(平成28年歯科疾患実態調査)
歯周病になると歯磨きの時の出血などは見られますが、痛みなどの自覚症状もあまり見られない為、発見が遅れることも多い疾患です。
まず、歯周病についての詳しい解説はこちらを参考にしてください。
<ブログ>知らない間にお口に潜む歯周病!
歯周病の治療法とは
歯周病の治療は、歯根の周りに付着している歯石や、歯肉の中で増殖してしまっている炎症性組織を除去することです。簡単に言うと、歯の周りにある歯肉の治癒を邪魔をする異物を除去する事が目的です。異物を取り除けば、歯肉は自然に治癒します。転んでできた擦り傷がカサブタになり、自然に治るのと同じです。
歯周病が進行しているほど、異物の量も多いです。軽度の歯周病であれば、歯肉の周りの歯石を落とすだけで大丈夫ですが、重度の歯周病で深い歯周ポケットがある場合は、異物は骨の中の深いところまで広がっています。
完全に異物を除去するためには、歯肉を切り開く手術が必要な場合もあります。そのため、歯周病が重症化するほど、複雑な処置が必要になります。
歯周病が中〜重度の場合は、治療後に歯肉が下がることがあります。歯は体の末端の組織なので、一度なくなってしまうと、完全に再生することが難しいです。近年では、再生歯周治療が保険治療にも導入されてきていますが、骨の状態などで適応になる場合があるので、CTなどで治療部位の周囲を確認してから行います。
歯根の形は前歯と奥歯で違う
歯周病は歯の種類によっても治療の難易度が変わります。
治療が困難になることが多いのは奥歯です。理由は、奥歯の歯根の形態が複雑なことです。
写真を見てもらうと、根の形が複雑なことがよくわかります。前歯と比較して、根が複数本あり、分岐しています。
歯石は歯の上方から徐々に付着します。
お掃除するものが、単純な丸いものと、凸凹と複雑に入り組んでるものでは、単純な丸の方がピカピカに磨きやすいですよね。
歯もそれと全く一緒で、複雑な形の歯の方が、綺麗にするのが大変です。
奥歯はお掃除は大変
今度は歯を裏側から見てみましょう。
オレンジ色の部分が歯根、白色の部分が歯の頭になっています。
ピンク色に塗られている部分は舌でも触れる部分なので、簡単にお掃除可能ですが、黄色に塗られている部分は3つの歯根に囲まれているので、器具を当てるのがかなり難しくなります。
歯根の形態が複雑な部位は、清掃器具が届きにくく治療が困難になったり、治療後にお口の中をケアする際にも、注意して磨かないと歯周病の再発につながります。
歯周病が進行するとケアが難しくなる
歯周病は歯の周りの組織を破壊する病気です。重度歯周病は軽度のものと比べ、歯を支持する骨が大きく破壊されています。骨が破壊されることによって、歯根の露出が増えます。
歯の頭はツルツルしており、複雑な形をしていない為、お掃除は大変ではありませんが、歯根の露出が増えるという事は、清掃の難しい部分の露出が増えることになります。
もちろん、重度の歯周病になってしまっても、歯周病の治療を行い、セルフケアもしっかりと行えば歯肉の状態は安定します。
しかし、歯肉退縮する前の歯肉の方が、お手入れもしやすく、骨もしっかりしています。早いうちから異常がないかどうか確認しておきましょう。
歯磨きの時に鏡で、上下の歯肉に腫れや出血がないかどうかを確認したり、定期的に歯科医院を受診し、奥歯に隠れた磨き残しや出血がないか確認することも大切です。
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